先日、お題をいただいて、

そしたらサラサラーっと書けたお話。

長いからね





「ココロってなに?」 作・shuku

ぼくは「2号」。ロボットだ。
隣にいるのは「テル」。人間だ。
テルが生まれる前から僕はこの家にいる。
掃除をしたり、洗濯したり、重い物も運べる。
「アリサ」が週に1度、僕をピカピカに磨いて
充電してくれる。
アリサはテルのえらい人だ。テルは「おかあさん」
と読んでいる。変な呼び名。
「お父さん」はたまに来る男の人だ。
テルはまだ小さいけど、僕と1番仲がいい。
僕のことを「友達」と呼ぶ。変な呼び名だ。
テルはよく目から水を流す。
壊れたのか心配だけど、アリサにだっこされると
すぐに止む。きっとアリサは魔法使いなんだ。
僕はテルとずっと一緒にいれると思っていた。
1年2年・・・時が過ぎ、テルは20歳になった。
僕はちょっと錆びてきたけれど、まだまだ働くロボットだ。
ある日、テルが大きな荷物を持って家を出て行った。
アリサは心配そうに手を振っていた。
それからテルは家からいなくなった。

僕は「変」になった。

何十年もやってきた仕事が
できなくなった。

アリサは新しい電池に交換してくれたけど
僕は元気にならなかった。
自分でも何がどうなっているのか
わからない。

アリサは僕が壊れたと言った。
そうか僕は壊れたんだ。

新しいのを買わないと不便だと
アリサは急いで誰かに相談している。
そうか替え時なんだな。もう何十年も働いたんだ。

僕はまた「変」になった。

もっともっと動かなくなった。

ふとテルが小さいころに、目から水を流しているのを
思い出した。

あんな風に水が流れたら・・・
あんな風に抱きしめられたら・・・

僕も動けるようになるのかな。


アリサは部屋の端に僕を置いて
僕に帽子やコートをかけた。

ガラクタになった僕でも捨てないんだ。

僕はまた「変」になった。
でもいつもとなんか違うんだ・・
なんだか温かい。

「2号はテルが生まれる前からいてくれて、
テルの友達だもんね。」

テルがいなくなってから、アリサがこうやって
僕に話しかけるのは久しぶりだった。

「テルはね、大きくなったからひとり暮らししてるのよ。あたしも淋しくって、
2号もきっとあたしと同じ気持ちなのよね。」

淋しい・・・
キモチ?

「テルのお父さんが仕事で外国にいるでしょう。たまにしか帰って来れないからって
2号を私達にプレゼントしてくれたのよね。もう20年も経つのね。あなたのおかげでテルも淋しくなかったんだと思うわ。」

淋しい・・・?

プルルルプルルル
電話が鳴った。

「はい・・・あ!テル?元気してるの?」

テルだ!テルだテルだ!!
僕は踊り出した。
帽子もコートも床に落としてしまった。
アリサが笑った。
「あらあら・・。2号テルがいなくなってから壊れたと思ったら
なんだか淋しいだけだったみたい。踊って喜んでるわよ」

淋しい。
これが・・・淋しいキモチ。
僕、淋しかった。

なんだかスーっとした。
もやもやしたものが溶けた。

アリサはニコニコして電話を切った。
僕もニコニコしているのかな。

それからアリサは僕に教えてくれた。

心があるものは

淋しいと涙が出るの。
嬉しいと笑うのよ。
怒ったり、喜んだり・・・
心があるから。

僕、今うれしかった。

ココロ・・・。

僕にもあるんだ。
僕はロボットだけど、
涙は出ないし
笑わないけど

ココロはあるんだ。

ココロは見えないもの。
でも、みんなもってるもの。


それから数ヶ月、今日はクリスマス
僕は動いていた。

車の音がして、窓の外を見た。
アリサのお帰りだ。

ドアの前で待っていると
アリサの話し声が聞こえた。
お客さんかな。

僕はいつも通りスリッパを用意してドアをあけようとした。

ガチャ。

「ジャーン!」
アリ・・・
勢いよく飛び込んで来た人は
僕に頭をぶつけた。

「いて〜な2号。」

テルだ!
テルだテルだテルだ!!!

「元気そうでよかったよ!」
そう言ってテルは僕を抱きしめた。
昔、アリサがテルをそうしたように、
抱きしめた。

僕のココロはいっぱいになった。
今にも何かがあふれ出しそうだ。

あれ・・・
あれれれ・・・・

目の前が曇った。

水が、水があふれ出してきた。
「2号が泣いてる!!」

アリサがびっくりして僕をみた!

ガチャ。

「メリークリスマス!・・・あら?みんな玄関でなにしてるんだ?」
「お父さん!」

アリサが抱きついた。
アリサの目からは涙が出ていた。

「なんだかおかしい絵だね。」
「そうだな。」
「ロボットが泣いてるしね。」

みんなで大笑いした。

それからみんなでクリスマスパーティーをした。
最高の夜だった。

僕はロボットだけどココロがある。
何にでもココロがある。
それは形ないものだけど、
僕にとっての電池のように
人を動かす大切な電池。
ココロがあると喜んだり怒ったり忙しいけれど、
人間になれたみたいで嬉しい。
アリサやテルが僕に優しくしてくれたから
ココロが起動した。
優しさにココロが喜んだ。

ありがとう。


涙・・・それはココロの水。